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date :2015年10月05日

いのちを理解するのに ~連日報道される動物虐待に思うこと~

先日、申込みをしてあった「日本心理学会主催心理学市民講座、科学としての“心理学”シリーズ、五感の不思議を探る、“見る”“聴く”“触れる”を科学する」に出かけて講義を聞いてきました。
三人の先生の講義があり、その最後の一つ「触知性‐触覚がつくる情報への感受性、渡邊淳司先生」の話の中で、考えて感じたことがあったので、そのことについて書きたいと思います。


触知性、触文化を提唱する渡邊先生によると、
触覚は対象に直接触れることで生じる感覚です。そのため触覚は、対象がどのようなものであるかを知るだけでなく、それが存在していることを確かめる感覚であるともいえます。
だそうで、
触覚のこのような特性に着目し、触れることで生じる存在の感覚を、普段は触れることができないものに対して拡張することを試みました。見えないものや概念的なものを、何らかの方法で触れられるようにする(可視化する)ことで、それらを身体的な実感を持って理解することが可能になるのではないでしょうか。
そこで、この触知性を表現する次のようなワークショップを行ったそうです。
自分自身の生命と深いかかわりのある心臓の動き(鼓動)を図のような簡便な装置によって可触化し、それに触れることで生命としての自分を再認識するワークショップ「心臓ピクニック」を実施しました。参加者は、図のように、片手に聴診器、もう片手に振動スピーカ(心臓ボックス)を持ちます。そして、聴診器を自分の胸に当てて鼓動を計測し、それを心臓ボックスから音と振動として出力します。そうすることで、参加者は自身の鼓動を音として聞くだけでなく、振動として触れることが可能になります。

th.jpg

ワークショップでは、「こんにちは、初めまして。わたくしこういうものです~」なんて言って互いの心臓を交換してみたり、屋外に出て階段や坂を昇るときと寝そべっているときの心臓の違いを感じとったりするそうです。また、最後、後片付け時にボックスからコードを抜くときには、何とも言えない罪悪感めいた感情さえ体験したりするそうです。
生命に擬似的に触れる体験は、自分や他者の生命に意識を向け、自分も目の前の人も同じように心臓を動かして生きているということに、改めて気が付く機会であったといえます。

また、講義の中で、「記号接地問題」についてもお話しがありました。
私たちは、常に情報に囲まれて暮らしていますが、「言葉」のようなある種の記号でものごとを伝達するときに、その記号が自分の身体経験に結びつかない領域に及ぶと、「記号」が「記号」を説明していき、希薄な上滑りの情報が伝達される状況に陥ります。
たとえば、「猫」といわれたときに、私は我が家のももやひなたの、モフモフの毛や体重を思い起こして「猫」を理解しているわけですが、しかし「地球」と言われたのなら、それは撮影された画像での、「まるくて青くて・・・海や雲があって」なんて、知ったような「記号」としての「地球」を説明するわけです。その青い地球を守る「世界平和」なんて説明しろと言われるのなら、「記号」の地球を「記号」として使用して「世界平和」とは・・・と、まったく存在の実感のない情報を情報として扱うことになります。

「いのち」を、普通の現代の都市生活の中で理解することは大変難しいことだと思います。
特に、まだまだ具体的操作段階(ピアジェ)にある子どもたちが「いのち」を考えたときに、はたして「記号接地問題」を起こさずに、大人はこの言葉の持つ本当の意味を説明し、理解させることができるでしょうか?
テレビの動物感動番組を見せたところで、残念ながらそこで扱われるいのちも所詮は情報の域でしか伝わらないし、自殺未遂を繰り返す子に「いのち」の大切さを説いてみたところで、形式的操作(上記同様、ピアジェ)が可能なはずの少女はライトノベルでの17歳の死に憧れてしまいます。それは、悲しく無力感を感じる現実です。

今日もまた動物虐待のニュースが報道されました。豊島区で両前脚を切断され頭部を殴られた猫の死骸が放置されているのが発見されたそうです。
いのちの尊さ、その重みを理解することは、言葉のみによって行われたのならその上滑りは避けられないものだと思います。どうか、小さな子供たちには、「心臓ピクニック」のような存在の実感を伴う教育の機会が与えられますように。どんな小さないのちにさえも尊厳を見出す社会の実現を願って、私には何が可能なのか考えることを続けていきたいと思います。

※色字は当日配布の資料から引用(NTT技術ジャーナル2011.9 26p~30p)

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